緩和ケア科

新任医師ごあいさつ

皆さま、初めまして。
2021年4月に北里大学医学部麻酔科から相模原協同病院の緩和ケア科に参りました、林経人と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

実は、医者になる前は文系の大学を卒業し、3年ほどインテリア系商社でサラリーマンをしていました。それから医学部に入学したため、だいぶおじさまになってから医者になりました。元々は外科医になりたいと思い医学部を受験し、愛知県の藤田医科大学に入学しました。そんな私が緩和ケアを志したのは、医学部で緩和医療の臨床実習を行ったときでした。
それまでの実習は、明確な治療スケジュールにのっとり医師が治療するのを隣で見学するのが主な業務でした。しかし緩和医療の実習は、患者の話をじっくり聞くということが求められ、目立ったスケジュールはなく、少々拍子抜けしていました。私はある乳癌末期の方を担当させていただきました。連日朝から車いすを押して病院の外周を散歩しながら、自分の人生はつまらないことばかりだったという彼女の話を毎日聞いていました。そんな話ばかりで私も少々気持ちが萎え、このような実習にどんな意味があるのかと少し疑問に感じていました。ある時、病院のイベントで地域の子供たちと触れ合う機会がありました。ウナギつかみ大会があり、子供たちはみな苦戦する中、担当患者さんは何度も簡単にウナギを捕まえました。コツがあるんだよと笑いながら子供たちに説明する姿と、彼女を尊敬のまなざしで見る子供たち、私は心から驚きました。直前まで痛みに苦しみ、自分の人生を悲観していた彼女が、これほどまでに生き生きと子供たちに接するなんて想像さえできなかったからです。数日後、彼女は亡くなりました。しかし、彼女の最後の生きざまは、ウナギを通して見ず知らずの子供たちに引き継がれたのだと感じました。積極的な治療をしている時だけでなく、積極的治療ができなくなったときにも心から寄り添える医者になりたい、痛みなど辛い症状をできるだけ緩和させて、ご自身の生きざまを思う存分後世に伝えられるようお手伝いがしたい、それが緩和ケア医を志した理由です。

北里大学病院で初期研修後、麻酔科に入局しました。11年ほど手術麻酔を行いましたが、将来緩和ケアに携わりたい気持ちは揺るがず、麻酔科での私の専門は痛みの改善を図るペインクリニックとし、初期研修医時代も含め13年にわたりペインクリニック・緩和ケア分野で研究活動や学生・研修医の指導、外来・病棟業務を行いました。この度、相模原協同病院の緩和ケア科に出向させていただくこととなり、初めて緩和ケア病棟で働くことができました。慣れない業務も多く、日々翻弄される毎日ですが、充実感に満ちた毎日でもあります。患者さんに少しでも良い人生だったと思っていただけるよう、そして周りの方々にたくさんの生きざまが見せられるよう、これからも頑張る所存です。どうぞよろしくお願いいたします。